過敏性腸症候群とは
お腹の張るような感じがあったり、腹痛、繰り返される下痢や便秘、排便異常が慢性的に続いている状態です。検査を行っても異常所見がないことが多い。良性疾患であるが、症状が悪化すると、日常生活を送ることが難しくなることがあります。
過敏性腸症候群の原因
様々な要因が関与していると言われています。症状を悪化させやすい要因は、遺伝的要因や腸内細菌、感染性腸炎の発症、食べ物や食生活、緊張、不安、ストレスなどが関係しています。
- 緊張や不安、ストレスなどの脳の知覚過敏
- 消化管の運動異常
- 消化管の知覚過敏
- 消化管粘膜透過性亢進
- 消化管粘膜微小炎症
など、様々な原因で発症します。
脳から出ている分泌ホルモンや化学物質と腸機能は、関係しているといわれています。緊張や不安、ストレスなどがかかると、消化管に運動異常がみられやすいです。さらに、消化管の知覚過敏が脳に伝わると、腹痛やお腹の不快感を生じやすいです。
主な症状
腹痛やお腹の張るような感じ、ゴロゴロした不快感、下痢や便秘、下痢と便秘を繰り返す便通異常を生じます。長期間、上記の症状が持続します。
- 突然、腹痛やお腹の不快感、お腹の張るような感じがある。
- 排便したら、腹痛やお腹の張るような感じが改善される。一定時間経過すると、症状が落ち着く。
- 便の形や排便リズムが規則正しくない。
- お腹が張っているような感じがある、ガスがたまりやすい。
- 普段から下痢やゆるい便が出ている。
- 下痢と便秘を繰り返している。
- 下痢のあとは、コロコロ便や数日間便が出ないため便秘気味になる。
- 食事中に症状が出現しやすい。
- 休日や睡眠中に症状が現れにくい。
診断・検査方法
お腹の張るような感じがあったり、腹痛、下痢、便秘を何度も繰り返しますが、症状のみでは確定診断することは困難です。潰瘍性大腸炎、クローン病、腸炎、大腸がんや内分泌疾患などでも似たような症状が出現します。鑑別診断のため、各種検査にて他の疾患を除外して、確定診断を行います。
①診察
問診では、症状の内容をお尋ねします。必要に応じて腹部の触診や聴診を行って確認していきます。
②検査
血液検査や大腸カメラ検査を行って、他の疾患との鑑別を行います。必要に応じて、ガスの状態や腸管の形、便がたまっているかをレントゲン検査で確認します。各種検査結果や患者さんの自覚症状を総合的に判断して、確定診断を行います。鎮静剤を用いた大腸カメラ検査を行っているため、リラックスして受けていただけます。なお、大腸ポリープや大腸がん、潰瘍性大腸炎、クローン病などを発症している場合は、早急に適切な治療が必要となります。
治療方法
患者さんの日常生活に支障が出てしまう可能性があります。急いで治療を行う必要がないため、生活状況に合った治療を提案させていただきます。当院では、患者さんの生活の質が向上できるように努めています。
薬物療法以外にも、食事や生活習慣を見直しましょう。
①生活習慣を見直しましょう(食事療法・運動療法など)
食べ過ぎや栄養バランスの偏った食事、就寝前の食事、過度のアルコール摂取を避けましょう。緊張や不安、睡眠不足、過労、ストレスのかかる生活は、症状を悪化させやすいです。そのため、休息や睡眠時間をしっかり確保することが大切です。また、血行促進の効果があるため、日常生活の中で運動を取り入れてみましょう。腸の働きが整う効果も期待できます。無理のない範囲で、体操や軽いストレッチを行いましょう。
②薬物療法を行います
薬物療法は、生活習慣を見直しても症状が改善されない場合に行います。消化管機能調整薬で腸の運動を整えたり、整腸剤で腸内細菌をコントロールします。さらに、排便回数や便の形状に合わせて回数や硬さを調整する薬、漢方薬などを処方します。下痢や便秘を生じやすい患者さんには、あくまでサポートとして用いられます。不安やストレスなどを緩和させるために、安定剤を用いるケースもあります。症状や排便状況に合わせながら、服用していただきます。