胃潰瘍とは
『吾輩は猫である』『坊ちゃん』で有名な作家である夏目漱石が出血性胃潰瘍で命を落としたことは広く知られていますように、これまで男性の方が多く発症する傾向がありました。しかし、近年では女性の発症比率が増えてきています。胃潰瘍の原因は、ピロリ菌や鎮痛剤(NSAIDs)とされていますが、ストレスが原因となるケースもみられます。また、性格との関連性があり、几帳面や神経質、気がつきやすい、ストレスをためやすい、1人で悩みを抱えやすい方は特に注意しておく必要があります。胃粘膜を胃液内のペプシンや塩酸が消化し、。胃の粘膜がただれて胃潰瘍が生じるため、消化性潰瘍とも呼ばれています。
胃潰瘍の症状
1.みぞおち付近の痛み
多くの患者さんが腹痛を訴えられています。中でもみぞおち付近の痛みが多いです。胃潰瘍であれば、食後に腹痛があり、食事量が多くなると長時間痛みを生じていることが特徴です。一方、十二指腸潰瘍であれば、空腹時に腹痛があり、食事すると腹痛が落ち着いてくることが特徴です。また、自覚症状が軽いにも関わらず、進行しているケースもあります。穿孔性潰瘍といわれる胃に穴が開く状態になると、激しい痛みを生じます。症状がひどくなる前に胃カメラ検査を受けることを推奨しています。
2.吐き気や嘔吐・食欲低下・体重低下
胃酸分泌が増加して、自己消化を防ぐ胃の粘膜防御機構とのバランスが乱れると様々な症状が現れます。吐き気や嘔吐、食欲低下、体重低下などがみられます。食道へ胃液が逆流した際に、胸焼けを生じます。
3.吐血
胃酸で黒くなった血を吐きます。脈拍の乱れや血圧低下、冷や汗、激しい痛みを生じることがあります。出血性胃潰瘍とは、潰瘍の発生箇所の血管が破れた状態です。
4.下血
タール便といわれる黒い血便が出ますが、患者さんの中には気づかれない方もいらっしゃいます。貧血を起こして、ようやく自覚されるケースもあります。また、潰瘍の発生箇所の血管が破れているものを出血性胃潰瘍と呼ばれています。下血は、胃がんや大腸がんを発症しているサインかもしれません。下血しましたら、速やかに当院を受診しましょう。
5.背中の痛み
すい臓に炎症が広がってしまうと、背中の痛みが現れます。
6.酸っぱいげっぷや口臭、胸焼け
胃酸分泌が増加することにより、酸っぱいげっぷや口臭、胸焼けを生じます。ただし、口臭は、胃下垂や慢性胃炎、肝炎などでもみられます。
胃潰瘍の原因
1.ストレス
身体的なものや精神的なものがありますが、緊張や不安、イライラ、過労、睡眠不足などが関係しています。急性胃潰瘍は、急性的なストレスが原因といわれています。
2.ピロリ菌に感染している
胃潰瘍の罹患者の70%以上がピロリ菌に感染していると報告されています。経口感染にて感染し、幼少期に感染すると慢性胃炎が生じやすいです。ときに、慢性胃潰瘍などを発症します。胃潰瘍の原因がピロリ菌であれば、1週間程度、抗生物質を服用していただきます。
3.刺激物の摂り過ぎ
冷たすぎたり熱すぎる飲食物や刺激物をたくさん摂りすぎると発症しやすくなります。
4.長期間の薬服用
非ステロイド系消炎鎮痛剤は、腰や膝の痛み、関節リウマチなどの痛みを抑える作用があります。一方、胃腸の粘膜を荒らす副作用もあります。長期間、薬を服用することで胃潰瘍を発症しやすくなります。
5.アルコールやタバコ
大量な高濃度アルコールを摂取すると、胃の粘膜防御機構が壊れ、胃粘膜の血流障害がおこります。喫煙は胃酸の分泌を増加させ、同時に粘膜の血流を妨げます。このため、飲酒や喫煙される人は、胃潰瘍が発症しやすくなります。タバコやアルコールを控えましょう。
6.早食いや食べ過ぎなど不規則な食生活
就寝前の食事や食べ過ぎ、早食いなども胃への負担を増加させる可能性があり、規則正しい食生活を送りましょう
治療方法
薬物療法を行うと2〜3ヶ月程度で改善を期待できます。なお、薬の服用中にご自身の断で、勝手にやめないようにしましょう。症状が悪化する可能性があるため、必ず医師の指示に従いましょう。生活面では、刺激物や脂質過多、アルコールを控えた栄養バランスの良い食事や良質な睡眠、禁煙が大切です。また、ご自身に合ったストレス解消法を見つけておきましょう。
胃潰瘍は消化器内科へ
胃潰瘍は、ピロリ菌、ストレス、鎮痛剤などが原因となって胃の粘膜がただれています。
胃潰瘍は、みぞおちの痛み、吐き気、嘔吐などの症状が起こりますが初期には自覚症状が無いまま気が付かないうちに進行していくこともあるので、胃カメラ検査を受けて頂くことを推奨しています。
気になる症状がある方は、早めに胃カメラ検査が受けられる消化器内科を受診しましょう。